ニシヤマ研究所

思いついたことを研究する大学生のブログ

第六話『虹、虹、虹。』(ニシヤマ小話:その②)

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私はよく時々、空を見たくなります。

 

空が青く見えるのは、

太陽の光のうち、青の光だけが空気中のチリやホコリとぶつかり、

乱反射をしているから、なんだとか。

私はよく空を見上げます。

 

空は面白いです。

 

私は幾百と空を見上げてきましたが

 

一度として同じ空を見たことがありません。

 

空は、いつも私と違った表情を見せてくれるのです。

 

雲一つない晴天も

 

重たく冷たい曇天も

 

どんな空も私は好きです。

 

 

特に、空が時に見せるというのは格別に好きです。

 

虹は天と地を結ぶ懸け橋です。

 

わたしは、虹を探します。

 

 

 

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ぼくの両親が結婚する以前、

 

父は母をよくドライブに誘いました。

 

カーソングは決まって荒井由実でした。

 

父はそれ以外聴かない主義でした。

 

母曰く、

 

「あの人、コレ!って決めたら、それっきりだから。(笑)」

 

だそうで。

 

 

ぼくも子供のころ、父親の車に乗ると、

 

松任谷由実の『天国のドア』がヘビーローテーションしていましたので

 

今でも松任谷由実の曲を聴くと

 

当時見ていた車窓からの景色と、運転をする父の後姿を思い出します。

 

父と母が、交際を始めて一年経つか経たないかくらいのことです。

 

ドライブデートをしていた、ある日のことでした。

 

運転中に、「あっ。」と一つ、何かを思い出したように

 

父は突然、道端に車を止めました。

 

「何かあったんですか。」という前に

 

父は車から飛び出し、

 

無言で彼方を見据えていました。

 

そこで一言、ポツリと。

 

「虹…、出てますね…!」

 

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朝から降り続いていた雨は、いつの間にか止んでいて

 

少し空を見やりますと、大きな虹が一本パアンっと架かっていました。

 

しかしこのとき、母は彼方に見える虹よりも、

 

その彼方の虹に思いを馳せる父の姿を唯見つめていました。

 

漸くこの瞬間、母は今この状況の滑稽さに気づき、

 

笑いが込み上げてきたそうです。

 

 

 

「ホンっト、おかしいでしょ?

 

あたし笑っちゃってさ、

 

あんなキラキラした目で、虹を見る大人。

 

他にいるかしらって。

 

しかもデート中に

 

車も止めて、よ?

 

もう、初めて動物園に来た子供みたいな目をしてたの。

 

 

 

 

そのとき思ったよ。

 

ああ、この人しかいないって。

 

この人と結婚しようって。」

 

 

 

 

それが、僕の母が父と結婚しようとおもった最大の決め手であるとは

 

ぼくの口からは言い切れませんが

 

恐らく、あの日のことは今でも忘れられないくらい

 

素敵な思い出なのだろうと思いました。

 

 

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虹を見ると、この話を思い出します。

 

父はあの時、なにを想っていたのでしょうか。

 

母に、あの綺麗な虹を見せたかったのでしょうか。

 

それとも、自分の中の、少年のような好奇心に

 

ただ身を任せていたのでしょうか。

 

 

 

私も空を見上げれば、

 

誰かの心を動かすことが出来るでしょうか。

 

 

 

私もあの虹が、父と母を繋いだように、

 

 

誰かの心を繋ぎ止めることが出来たでしょうか。

 

 

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-------------虹、虹、虹。