第一話 『狂気の沙汰』(わらしべ長者:その①)
わらしべ長者というのがあります。
ある一人の貧乏人が、偶然手にした一本の藁を物々交換を経ていくにつれて、最後には大金持ちになるというお話です。日本では古くからあるおとぎ話でして、その原話は『宇治拾遺物語』『今昔物語集』に見られるのだとか。世界中にも似たようなお話があるようです。
物々交換の遍歴をみると、以下の通りになります。
わらしべ→わらしべwithアブ→ミカン→反物(呉服)→馬→屋敷
なるほど。
物々交換を何度も繰り返せば、高価なものになっていく・・・。
なんともロマンがあふれるおとぎ話でしょうか。
もし、これを現実の世界でやってみると、一体どうなるのでしょうか?
そんなことを思った人たちは、案外世界中を探せばいるわけで。
2005年、カイル・マクドナルドさんは、一個の赤いペーパークリップから「わらしべ長者」を夢見て、物々交換を始めました。
クリップは、魚の形のナンセンスなペンになり、そのあとはドアノブ、キャンプストーブ、発電機、パーティセット、スノーモービル、ヤークという町への旅行、車、レコーディング契約、米フェニックスの家に一年間住む権利、アリス・クーパーと半日一緒にいられる権利、KISSのスノーグローブ、ハリウッド映画に出演できる権利・・・。
そして一年かけた物々交換は、カナダのサカキュワン州キプリングという町の家にたどり着きました。
赤いクリップが家になる。現代のわらしべ長者となったマクドナルド氏は、生涯名誉町民の称号をも手にしたそうです。
さてさて、薄々感づいている方もいらっしゃるでしょうから、本題に入りましょう。
先日、弘前公園に行ったとき、偶然あるものを拾いました。(正確には、拾ったものを押し付けられたのですが。)
その、あるものというのがこちらでございます。
俗にいう「パンの袋のやつ」です。
こいつ、実は名前があるそうで、「バッククロージャ―」というらしいです。(小さいくせに生意気な名前してます。)
調べてみると、アメリカ合衆国のクイック・ロック社の創業者であるフロイド・パクストンさんが発明したもので、特許はアメリカが取得しているらしいです。日本では日本法人クイック・ロックジャパン株式会社のみが製造しているのだとか。(生意気とか言ってゴメンナサイ。)
このバッククロージャ―から、ニシヤマ研究所の「わらしべ長者プロジェクト」を始めましょう。
偶然弘前公園に落ちていた「バッククロージャ―」、偶然貧乏人が手にした一本の藁。
なんだか共通しているところがありますし。
といっても、道端に落ちているバッククロージャ―と何かを交換してくれなんて、「ちょっと待った!」って話です。
少しでも、より良いものを、最高の品質でお届けするってのがスジだと思います。
ということで、洗います。
道端に落ちているバッククロージャ―を家に持って帰って、食器用洗剤で洗って、洗濯ばさみでつまんで干す、こんなことをしている大学生が他にいるでしょうか。しかもこれを物々交換に出すというのだから、もう、狂気の沙汰でございます。今に始まったことではないですが。
綺麗になりました!これで安心。最高の品質でお届けできます。
交換方法は、どうしましょうか。ネットで募集ということにしますかね。前述したカイルさんもインターネットを使って世界中の人に呼び掛けたそうですし。
物々交換したい方、お待ちしております。
条件は、「現代のわらしべ長者」であるカイルさんのものをお借りしましょう。
「もっと大きくて、もっといいモノ(Bigger and Better.)」
さて、一体何になるのかな。